お子さんの中耳炎の特徴
耳と鼻とは、耳管(じかん)という管を通してつながっています。
大人と比べてお子さんは中耳炎に罹りやすく、その理由は、お子さんの耳管は大人に比べ太くて短く傾きも水平に近くバイキン(細菌やウイルス)が簡単に鼻から耳に波及しやすいためとされます。
中耳炎の分類
中耳炎は大きく分けて
- 急性中耳炎(鼓膜の裏に膿がたまって痛みを伴う中耳炎)
- 滲出性中耳炎(鼓膜の裏に液がたまって聞こえにくくなる中耳炎)
- 慢性中耳炎(鼓膜に穴が開いている状態)
の3種類があります。
正常:透き通った正常鼓膜です。
滲出性中耳炎:褐色の液が鼓膜の裏に溜まっています。
急性中耳炎:鼓膜が赤白く濁り、膨れています。
急性中耳炎
3歳以下のお子さんの70~80%が一度は罹るとされる、風邪の後に多く発症する中耳の炎症です(耳の外から水や菌が入って中耳炎を起こすことはありません)。一般には、風邪のときに鼻のバイキンが耳に移行して炎症を起こします。小学校に入学するまでの年齢のお子さんは風邪を引き鼻水が出ると中耳炎になることも多いため、耳鼻咽喉科の受診をお勧めします。
急性中耳炎の症状
耳の痛みや耳だれ、耳の詰まり感、難聴などの耳の症状の他に、発熱や食欲不振がみられます。小さなお子さんの場合は上手く痛みを伝えることができないため、機嫌が悪くなったり耳をよく触ったりするようになるので中耳炎だとわかることがあります。また、耳痛を訴えず発熱のみの場合もあります。幼稚園や保育園などの集団保育に通っている小さなお子さんは急性中耳炎を繰り返しやすく、重症化、難治化しやすいので、きちんと治療することが大切です。
当院の治療内容
安静にしていただき、痛みが激しい場合には痛み止めを使います。消化の良い食事と水分補給をしてください。抗生剤を内服していただき、原因となる細菌を退治して炎症を食い止めます。鼻水が多いと中耳炎の治りも遅くなるため、お鼻の治療も含めてまめに通っていただいた方が治りも早くなります。
鼓膜の発赤や腫れがひどい場合や激しい耳の痛み、あるいは高熱、頭痛がある場合には、鼓膜に少しだけ穴を開け、中耳より膿を出す鼓膜切開を行う場合もあります。切開を行うかは相談のうえで決めさせていただきます。
滲出性中耳炎
滲出性中耳炎とは
耳管の機能が悪くなると、鼓膜の奥の中耳が陰圧になって体液が滲み出てきます。この体液を滲出液といい、そのため滲出性中耳炎といわれます。お子さんから大人まで幅広い年齢層に起こりますが、お子さんの発症が非常に多いです。
滲出性中耳炎の原因
急性中耳炎が治りきらずに滲出性中耳炎に移行することがあります。また、滲出性中耳炎につながる耳管の機能不全の要因として、
- 鼻の病気などで耳管の出口に鼻水がある状態
- およそ7歳までのお子さん(耳管の機能が未熟とされます)
- アデノイドといわれる鼻の奥の扁桃が大きい
上記が挙げられます。
滲出性中耳炎の症状
急性中耳炎と違い耳痛や発熱は通常ありません。鼓膜の奥に滲出液が溜まっているため水の中で音を聞いているような状態になり、音の伝わりが悪く、耳が詰まったような聞こえの状態になります。聞こえの低下は緩やかであるため、特にお子さんの場合はテレビの音が大きくなったり名前を呼んでも振り向かなかったりすることで気づかれることもあります。
当院の治療内容
滲出性中耳炎の治療で大切なことは最後まで治療することです。風邪であれば風邪の治療を行い、副鼻腔炎であれば副鼻腔炎の治療を行い、鼻の奥の状態をきれいにすることが滲出性中耳炎の治療となります。鼻水や鼻詰まりがなく鼻がきれいな状態でも治りが遅い場合は、鼻から耳に医療用の風船を使って空気を通す治療(耳管通気)を行います。さらに治りが悪い場合は鼓膜に小さな穴をあけたり鼓膜にチューブを留置したりして外科的に滲出液を出す場合があります。滲出性中耳炎は症状が少なく治療の効果を実感しにくい病気ですが、放置しておくと、癒着(ゆちゃく)性中耳炎など将来に手術が必要な病気に進展する可能性があり注意が必要です。
慢性中耳炎
慢性中耳炎とは
一般には幼少期に中耳炎で鼓膜が破れたのちに穴が残るなどで、鼓膜に穴が空いたままの状態を指します。耳だれ、耳鳴り、難聴などの症状があります。
当院の治療内容
穴が空いた状態を放っておくと、難聴の悪化・耳鳴りの悪化につながる恐れがあります。
従来、鼓膜形成術や鼓室形成術といった耳の後ろの切開を要する手術が行われてきましたが、医用材料の進歩により、こうした手術を行わなくとも比較的高い確率で鼓膜穿孔を閉鎖することができるようになりました。
鼓膜穿孔閉鎖術の流れ
- 鼓膜穿孔の周辺を薬剤や針を用いて傷をつけます。(穿孔縁の新鮮化)
- 医療用コラーゲンスポンジを挿入します。
- 医療用のり(フィブリン接着剤)を用いて固定します。
処置は10分程度、外来で行えます。処置後、通常の生活が可能ですが、穿孔が閉鎖するまで、耳内に水を入れないようにして下さい。この処置を数回程度繰り返すことで、穿孔が徐々に閉鎖していくことが多いです。
鼓膜穿孔閉鎖術の費用
診察料に加えて、
鼓膜穿孔閉鎖術(3割負担の方で4700円ほど、初回のみ)
鼓室処置(3割負担の方で160円)
材料費として、必要時に下記の材料費をいただいています。
フィブリン接着剤(3割負担の方で2200円ほど)
コラーゲンスポンジ(3割負担の方で70円ほど)